中西圭子・山本修司
「一つのメルヘン」を添えて
中西圭子さんと山本修司さんは、お二人とも長年、関西のアートシーンで活躍してこられたアーティストです。
中西さんは、色鉛筆や水彩絵の具によるシンプルなドローイングを積み重ねることで、水や植物などの有機的なイメージを描き上げます。そこには作家自身のしなやかな身体性を通した瑞々しい詩性が、濃密に立ちあがっています。
山本さんは、カメラで撮影した木漏れ日や水面の風景を油彩画で再現。精密かつ複雑な光の階調を、まるで写経のような敬虔さで写し取りながら、抽象と具象の間を行くような平面作品を制作。また、河原の小石を無数に接着して造形するオブジェやレリーフも精力的に制作されています。
作風は違えど、その作品には、それぞれの方法で到達した静謐さが共通して宿っています。そしてその静けさとは、創造過程での作者の“無心”が世界と一体化していく時のダイナミズムを、観るものの心にも届けてくれているようにも思えます。
本展では、お二人のそれぞれの作品展を繋ぐ通路に、中原中也の有名な詩の一編『一つのメルヘン』を添えて展示します。
■中西 圭子(なかにし たまこ)
大阪府高槻市出身。大阪外国語大学中国語科(現:大阪大学外国語学部)卒業。素描詩集『Paper Leaves』(vol.1〜4・紫紅社)アートブック『水辺で会いましょう』(パレード社)を出版。個展、グループ展多数。近年では2025年に茨木市立川端康成文学館にて企画個展『眠る水』を開催。大阪芸術大学芸術計画学科、美術学科特任教授を経て、現在通信教育学部特任教授。
■山本 修司(やまもと しゅうじ)
松山市出身。1982年大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業。長年関西を中心に活動してきたが、近年拠点を故郷の愛媛県松山市に移す。関西を中心に個展・グループ展多数。愛媛県内では2010年「ミルコトカラハジマル自然との対話」(愛媛県美術館)2023年「Up and coming展V」(ミウラートヴィレッジ)等。近年では2025年に岡山県の真庭市蒜山ミュージアムにて「山本修司 描写する水面/枯山水の水面」を開催。 |